「私がおかしいの?」と思ったら…ガスライティングとは何か
■ はじめに
誰かと関わる中で、「自分が悪いのかな?」「記憶が間違っているのかも」と感じたことはありませんか?
それがたび重なるようなら、それは単なる誤解ではなく、「ガスライティング」という心理的な操作の可能性があります。
近年、モラハラや精神的DVの文脈でも注目されているガスライティング。この記事ではその意味や特徴、具体例、そして対処法について解説します。
■ ガスライティングとは?
ガスライティング(Gaslighting)とは、相手の感情・記憶・現実認識を否定し、長期的に混乱させ、自己否定に追い込む精神的操作のことです。
加害者は被害者に対し、「それは勘違い」「そんなこと言っていない」「あなたの考えすぎだよ」などと繰り返し語りかけ、被害者に“自分がおかしい”と思わせるよう仕向けていきます。
名前の由来は、1944年の映画『ガス燈(Gaslight)』。夫が妻を精神的に追い詰めていく様子から、この言葉が生まれました。
■ ガスライティングの主な特徴
ガスライティングの加害者は、露骨に怒鳴ったり暴力をふるうわけではないことが多く、巧妙で分かりにくいのが特徴です。次のような言動が見られる場合、注意が必要です。
● 記憶の否定
「そんなこと言った?言ってないよ」
「前も同じことで勘違いしてたよね」
→ 実際に言われたことや体験したことを否定され、混乱させられる。
● 感情の否定
「そんなに怒ることじゃないでしょ」
「すぐ泣くなんて大げさすぎる」
→ 被害者の感情を“過剰反応”として扱い、信頼できなくさせる。
● 第三者を利用する
「みんなもそう言ってたよ」
「君って本当に空気読めないって同僚も言ってた」
→ 根拠のない“他人の声”を使って、被害者に非を認めさせようとする。
● 被害者を「病気扱い」する
「最近おかしいよ。心療内科行ったほうがいいんじゃない?」
→ 心の状態を否定し、正当な反論や疑問を「精神的不安定」とすり替える。
■ ガスライティングの影響
長期間ガスライティングを受けると、被害者は次第に次のような状態に陥ります。
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自分の記憶や感情が信じられなくなる
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常に不安や緊張を感じる
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他人の言葉に過剰に依存する
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自己肯定感の喪失・うつ状態
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「自分が悪い」と思い込むようになる
このように、ガスライティングは心の健康をむしばむ、深刻な精神的暴力です。
■ ガスライティングを見抜くサイン
「これっておかしい?」と感じたとき、次のポイントを振り返ってみてください。
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自分の言動や感情を相手にいつも否定される
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会話のあと、強い罪悪感や自信のなさが残る
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相手と関わるようになってから、自己判断ができなくなった
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他人の前では感じなかった「自分のダメさ」を強く意識するようになった
直感的な違和感こそ、ガスライティングのサインであることも多いのです。
■ ガスライティングへの対処法
ガスライティングを受けているかもしれないと感じたとき、自分を守るためにできることがあります。
1. 記録をとる
言われたこと、感じたこと、状況を日記やメモに残しましょう。自分の感覚を見失わないための大切な証拠になります。
2. 信頼できる第三者に相談する
家族や友人、カウンセラーなど、外の視点から話を聞いてもらうことで、自分の感覚が間違っていないことに気づけることがあります。
3. 距離を取る・関係を見直す
可能であれば、物理的・心理的に距離をとりましょう。難しい場合は、心の中で「これは相手の操作だ」とラベリングするだけでも効果があります。
4. 専門機関のサポートを受ける
ガスライティングはDVやモラハラに含まれる場合があります。心理カウンセラー、配偶者暴力支援センター、弁護士などに相談することも視野に入れましょう。
■ 自分の感覚を信じることが第一歩
ガスライティングの怖さは、「相手が正しく、自分がおかしい」と思い込まされてしまう点にあります。
でも、あなたの感じている違和感、悲しさ、怒り、不安は、ちゃんとした“心の声”です。
誰かの操作によって、その声を消してしまわないでください。
あなたの感覚を信じることが、心を取り戻す第一歩です。
■ まとめ
ガスライティングは、見えにくいけれど深く傷つく心理的支配です。
自分を責める前に、「もしかして操作されていないか?」と立ち止まることが大切です。
周囲の助けを借りながら、自分を大切にする選択をしていきましょう。
心がふっと軽くなる日が、必ずやってきます。